『田園の詩』NO.106「戦い済んで日が暮れて」(1999.11.23)


 ≪立秋≫といっても九州ではやっと秋が深まり始めたばかりで、日中はまだ気温が随分と
上がります。今年は特に暖かくて、昨日やって来た友達がTシャツ一枚だったのには私も
驚きました。暖冬が予測されます。

 さて、 町内で、最後まで残っていたお米の取り入れも、文化の日とそれに続く土・日で
全て終わったようです。きれいに刈り取られた田園は例年と変わらぬ姿を見せています。
ちょうど、「さびしさに宿を立ち出でてながむれば いづこも同じ秋の夕ぐれ」といった
光景です。

 しかし、今年の稲刈りほど苦労したことは近年ありませんでした。先の歌のパロディーを
作れば「ながむれば戦い済んで日が暮れて 今年も同じ秋の夕ぐれ」といったところでしょ
うか。農家の人達にとって心躍る収穫の仕事が「戦い」のように私には思えたのです。

 天候不順で、9月に発表された作況指数が100に満たない「やや不良」だったのに、
更に台風18号の被害で稲がほとんど倒れてしまい、10月25日の発表では、大分県
は全国最低の81の「著しい不良」になってしまいました。実際の状況を聞いてみると、
未熟粒も多く、平均して例年の3〜4割減の収穫だったようです。

 収穫減は予想(覚悟)できたものの、何より大変だったのが稲刈りの作業でした。いつ
もならコンバインが往復して、広い田園もアッという間に刈り取ってしまいます。しかし、
稲が倒れているのでそう簡単にはいきません。コンバインは一方方向にしか刈り進めず、
一旦バックしてからまた刈り進むといった具合です。

 竹の竿で倒れた稲を全部起こしている所もありました。どうしても機械の入らない所は、
昔ながらにカマで刈り取り「掛け干し」をしていました。


     
   今でも、こだわってお米を作る人は、「掛け干し」をしています。天日で乾燥させると
     味が良くなるとのことです。いただいて食べましたが、確かにそう感じました。
                             (2008.10.15 写)



 例年なら、機械を扱える若者がいる土・日に一気に稲刈りを済ませてしまうのですが、
今年は時間と人手が倍以上要りました。「一家総出」の光景も久しぶりに見掛けました。

 子供達が農作業の体験をしたことだけは良い収穫だったのかもしれません。
                             (住職・筆工)

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